『君は天皇をどうしたいのかね?』
明石元紹・小田部雄次
天皇ご学友と皇室研究第一人者が天皇のビデオメッセージの「真意」を代弁!
天皇ビデオメッセージの真の意味とは?天皇・皇室をまったく理解していない安倍政権これからの皇室のあるべき姿とは?
<天皇 ビデオメッセージ>
◉第一部─天皇のお言葉と皇室(小田部)
明石元紹さんとの出会い
天皇の「お言葉」
天皇退位特例法の制定へ
◉第二部─天皇陛下と同じ時代に生きて(明石)
天皇のお言葉に対する思い
天皇と私の少年時代
天皇の人格形成
◉第三部─新しい時代の皇室(明石)
象徴天皇としての役割
これからの皇室をどうするか
天皇家の継承問題
皇室はいかにあるべきか
『君は天皇をどうしたいのかね?』余話
ーー剛速球のストレートを投げてくる明石元紹さんーー
<平和の象徴、皇室の未来を考えること>
【今、日本が一番考えねばならない問題】
天皇の御学友の明石元紹(あかしもとつぐ)さんに、『昭和天皇実録評解』第二巻を贈呈したところ、わざわざ静岡まで私に会いに来てくださった。和気藹藹とした会話になるのではないかと期待したところ、序盤の雑談が終わると、明石さんは不意に、「わからない、とくに今の六〇代は、皇室をどうしようとしているのかわからない」と言って、私を直視した。私だけでなく、安倍晋三首相も六〇代であり、二周り下の世代の皇室観にギャップを感じていたのだ。
明石さんは、麻生太郎副総理や杉田和博内閣官房副長官に会って直言するほど天皇の退位問題に心を砕いた人であった。「皇室と縁戚でもある麻生が一番悪い、なぜ安倍と皇室の間を調整しないのか」と怒ることもある。そんな明石さんが静岡まで足を運んでくれたことに恐縮するとともに、せっかくだから、戦後の「皇室の藩屏」とも言うべき明石さんと、戦後の国民主権世代である私とで、世代ギャップを確かめる対談をしてみたいと思った。それを『君は天皇をどうしたいのかね?』にまとめた。
対談といっても、明石さんの剛速球のストレートをはじかずにキャッチするので精一杯だった。それでもなんとか明石さんの球を受け、返球もして、共通のイメージがみえてきた。皇室は、一時的な政権の下請けで動く存在ではなく、もっと長いスパンでとらえていかなければならない。今後、皇太子に皇位が継承されて後、皇室はどのような活動をしていくべきなのかの未来像を、誰がどう描いていくのか、などである。
明石さんは、「退位は是か否か」「男系か女系か」というのは末節の議論で、今後、皇室と日本社会は激動する世界のなかで、どういう形でつながっていくのか、それを誰がどうやって築くのかというところまで視野に入れていくべきだと語る。そして、「日本の国のかたちを考えない安倍政権」「原則は第一子への継承」「皇族は少ないほうがいい」と、次々剛速球のストレートを投げる。
刊行後に『サンデー毎日』で再び対談があり、またも剛速球を受けることになった。開始早々、「眞子内親王の今度の婚約内定はどうなのか」とストレートが飛んできた。速すぎて球が見えず、うまくキャッチできなかった。しかし、それだけに明石さんの剛速球がミットに収まった時の力強い音は快感である。
●明石元紹(あかし・もとつぐ)
今上天皇をもっともよく知る級友のひとり。1934年、東京生まれ。幼稚園時代から明仁親王の遊び相手となり、学習院初等科では、一緒に日光への疎開。また、高等科馬術部のチームメイトとして、3年間を過ごす。陛下のご結婚後もポロやテニスなどを通じて、親交がある。
●小田部雄次(おたべ・ゆうじ)
皇室研究の第一人者。静岡福祉大学教授。1952年、東京生まれ。立教大学文学研究科博士課程満期退学。専門は、日本近現代史。皇族や華族に関わる資料を発掘しながら、 分析し続けている。著書に、『近現代の皇室と皇族』『昭和天皇実録評解』1、2(ともに敬文舎)、『李正子』(ミネルヴァ書房)ほか多数。