『昭和歌謡』

ーー流行歌からみえてくる昭和の世相

高島 フランソワ


定 価: 2,640円
発売日: 2017年12月20日
判型/頁: A5判変型 並製 256頁
ISBN: 9784906822768

石原裕次郎、美空ひばりなど数々のスターがいたあのころ…。 歌謡界に長年貢献してきた著者が、 昭和のヒット曲を解説しながら、激動の昭和の歴史を振り返る。

■本書の特色

◉昭和をいろどった歌手1000人、流行歌1000曲の索引がついています。
◉著者が実際に経験したエピソードが満載!!
◉昭和元年から64年まで、毎年1曲をピックアップし、全歌詞と歌の背景を解説した。その年に流行した10曲も掲載。
◉大衆の求めた「時代の歌」を音楽業界の事情とともにトピックスとしてまとめた。
◉歌手の写真のほか社会・世相の記事や写真を掲載。


■本書の内容

昭和8年 東京音頭(三島一聲、小唄勝太郎)
昭和12年 別れのブルース(淡谷のり子)
昭和21年 かえり船(田端義夫)
昭和32年 俺は待ってるぜ(石原裕次郎)
昭和48年 てんとう虫のサンバ(チェリッシュ)
昭和54年 いとしのエリー(桑田佳祐)
昭和64年 川の流れのように(美空ひばり)など

<時代の唄、激動昭和を映す>

 歌は世につれ世は歌につれ〟とは、ある時代によく歌われる歌は、その時代の世情をよく反映しているという意である。逆説的な表現をすると、大ヒットした歌をじっと味わっていると、その時代と国の方向付け、民衆の考え方などが滲み出ているのである。
 この小著は、昭和元年(一九二六)から昭和六四年(一九八九)までの六四年間の大衆歌謡の流れを記述した。その年の世相をよく反映している一曲をピックアップして、歌詞とともに歌の背景を紹介、その年に流行した一〇曲を並べ(これは私自身の好みが入っている)、歌謡、芸能、放送、レコード界の出来事、その年の一二か月間の事件、加えて5年ごとに区切って大衆音楽界の動向を懐古したものである。

<歌謡文化の成り立ち>

 明治以降、西洋文明が洪水のようにどーっと流れ込んできた。音楽界も例外ではなく、学校での西洋音楽教育の普及、楽譜・歌詞本の出版、放送の浸透、レコードの発達によって大衆音楽が拡散した。鎖国から解放された幕末に、西洋音楽は、キリスト教とともに導入された賛美歌、士気を高めるため軍楽隊が奏する軍歌、学校の教育教材として作られた唱歌の三本柱が、西洋音楽を育てあげることになった。歌謡曲は日本伝統の七・五調の歌詞を西洋楽器で包んだ流行歌である。いずれにしても和洋折衷の文化だ。
 団塊の世代が第一線で活躍した時代には、西欧でタンゴが流行すればタンゴの要素を、ブルースが流行(はや)ればブルースのエッセンスを吸収して、さらに換骨奪胎(かんこつだつたい)して日本流の流行歌を作ってきた。したがって昭和の流行歌は意外なほどモダンで、その知恵とセンスとエネルギーに感嘆し、うっとりとしてしまう。
 平成二九年の今、テレビ、ラジオの電波媒体や新聞などの活字媒体に〝昭和歌謡〟やそれに類した言葉が氾濫している。しかし、取り上げられている内容はほとんど昭和四五年以降のもので、これでは昭和歌謡の看板に偽りありという感覚に陥りそうだ。団塊世代の老齢化が進む反面、現役として活躍中のプロデューサー、構成作家、エディターが昭和四〇年代以前の史実を知らぬこともあって、こうした現象が起こっていると思われる。

<未来に生きる昭和歌謡>

 昔はよかった、夢があったというノスタルジーだけでは、お年寄りのなぐさみものだけになってしまう。本書をご愛読いただいて、大いに若返り、今日の、さらには明日の生活のエネルギー源にしていただき、現在をディスカバーしてくださればと願ってる。
 一方、若い人たちには歌を通して眺めた昭和史をつうじて、近代日本の発展を見てほしいと願っている。

●長田 暁二(おさだ・ぎょうじ)

昭和5年、 岡山県生まれ。大学卒業後キングレコード入社、30 年間にわたってディレクターをつとめる。童謡、民謡、軍歌、歌謡曲とその幅は広い。主な著書に『日本抒情歌大全集1~4巻』『日本民謡辞典』『戦争が残した歌』などがある。

▲top

掲載の記事・写真・イラスト等すべてのコンテンツの無断複写・転載を禁じます
Copyright (C) 敬文舎 All Rights Resereved.