『疫病と日本史ー「コロナ禍」のなかから』
小路田泰直 編著
今回のコロナ禍を大きな社会の構造的な歪みの現れととらえ、それが何かを突き止めようと試みる。また、歴史学は、飢饉や疫病を歴史のエピソードとしてとらえるのではなく、時代を動かす歴史の原動力としてとらえなくてはならない。第1部では前者の試みを、第2部では後者、つまり歴史学の生まれ変わりの手がかりをつかもうとする試みである。
◆第一部 「コロナ禍」への問い
第一章 疫病と歴史の構造転換─スペイン風邪からCOVID-19へ 小路田 泰直
第二章 新型コロナウイルス禍と惨事便乗型政治の失敗 岡田 知弘
第三章 コロナ禍の「自粛要請」とその受容の精神史 住友 陽文
第四章 疫病国家論 田中 希生
第五章 新型コロナウイルス感染症対策の史的前提と専門家会議 西谷地 晴美
コラム1◉大学、専門家養成システムの衰弱──森有礼の呪い 小路田 泰直
◆第二部 疫病から読み解く歴史
第六章 近代日本の誕生と飢餓・疫病・戦争 小路田 泰直
コラム2◉「明治前期の都市と部落」再考──一八八六年のコレラ 小路田 泰直
第七章 隔てること・つなぐこと──奈良・平安期の疫病をめぐって 西村 さとみ
第八章 疫病と仏教導入とその日本化 斉藤 恵美
第九章 飢餓・疫病と農業・貨幣の誕生 村上 麻佑子
■小路田泰直(こじた やすなお)
1954年生まれ。奈良女子大学STEAM・融合教育開発機構特任教授。研究分野は 日本近代史。
おもな著書に『日本史の思想― アジア主義と日本主 義の相克』(柏書房)、『「邪馬台国」と日本人』(平凡 社新書)、『日本近代の起源―三・一一の必然を求めて』(敬文舎)、 『日本史の政治哲学―非西洋的民主主 義の源流』(かもがわ出版)がある。 專門分化し視線では見えないものが、地域や生活の場にはある。それを読み解くための歴史学を今は目指している。